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花粉症

 患者が急増したとあって、薬物療法はあくまでも症状を改善する対症療法ではあるものの、着実にオーダーメード医療として確立しつつある。

 獨協医科大学の馬場廣太郎名誉教授らの行った「鼻アレルギーの全国疫学調査2008(1998年との比較)」によると、スギ花粉症の有病率は98年が16.2%だった。それが08年は10ポイント以上も上回り、有病率26.5%。4人に1人がスギ花粉症と、高血圧患者予備軍並みとなってしまった。

 そこまで患者が急増したとあって、薬物療法はあくまでも症状を改善する対症療法ではあるものの、着実にオーダーメード医療として確立しつつある。

 症状に合わせて「第2世代抗ヒスタミン薬」「遊離抑制薬」「鼻噴霧用ステロイド薬」「ロイコトリエン受容体拮抗薬」「トロンボキサンA2受容体拮抗薬」などが選択されるが、ベースになる薬は第2世代抗ヒスタミン薬。つまり、薬を組み合わせるときに、必ず第2世代抗ヒスタミン薬が処方されるのである。

 スギ花粉症で苦しんでいれば、仕事の能率が急激に低下、つまり、パフォーマンスの低下があるので、当然治療をする。ところが、第2世代抗ヒスタミン薬の多くには「日中の眠気」「インペアード・パフォーマンス」という短所がある。

 インペアード・パフォーマンスとは、「気づきにくい能力ダウン」と考えると良いだろう。

 脳内ヒスタミンは、集中力、判断力、作業能率、覚醒の維持に働いている。ところが、抗ヒスタミン薬の中には、脳内に移行して脳内ヒスタミンの働きをブロックしてしまうものがある。

 たとえば欧米での研究では、抗ヒスタミン薬を服用した場合、ウイスキーのシングルを3杯飲んだときと同程度にパフォーマンスが低下すると報告されている。

 自覚しないままに大きくQOL(生活の質)を低下させているため、この状態で自動車の運転をすると交通事故も起こしかねない。抗ヒスタミン薬の服用に伴うリスクの社会的認知が進んでいる米国では、37州とワシントンD.C.で、中枢抑制作用のある抗ヒスタミン薬を服用したときは、自動車の運転が法律で禁止されている。

 日本にはそのような法律はないが、中枢抑制作用のある抗ヒスタミン薬を服用したときは、車を運転しないほうがよい。それが無理な花粉症患者は「服薬時自動車運転等への注意」の記載のない第2世代抗ヒスタミン薬を医師に伝え、処方してもらうべきだろう。

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舌がん

 あなたは診察を受けて“がん”と診断された場合、どのように対応するだろうか。「一刻も早く治療を始めたい」のが患者の思いではなかろうか――。

 その思いに応え、「無治療期間」を徹底して短くし、がんの進行を抑えようとしている施設がある。昭和大学歯科病院口腔外科がそれである。

 舌がんを含めた口の中のがん、口腔がんは歯科での定期検診で発見されるケースが非常に多い。それだけ、歯のチェックを年に何度か受ける人が増えているのである。

 一般的な口腔外科では、舌がんなど口腔がんの疑いで紹介された患者に対し、診察を行ってやはり口腔がんの疑いがあると、組織の一部を採取する「生検」を行う。その後、病理診断を行い、がんか否かの結果が出るのに1週間。患者は何もしないで一週間待たされる。もちろん、がんであればその間にもがん細胞は増殖している。進行がんであれば転移が進んでいくかもしれない。

 「生検の結果をいつ知りたいか?」「結果判明後、治療はいつから始めたいか?」、全国約1300人に行ったアンケート調査結果がある。

 生検の結果は、「生検を行った日に知りたい」人が34%、「2、3日中に知りたい」人が39%。当日、もしくは2、3日中に知りたい人が73%にものぼった。では、治療は――。結果判明から「1週間以内に始めてほしい」人が85%。やはり患者の多くは迅速な対応を求めているのである。

 その声に応えて、昭和大学歯科病院口腔外科では「術中迅速病理診断」を導入。通常は、生検で病巣から採取した組織をホルマリンに浸し、パラフィンで固めて切片を作って病理診断を行うので時間がかかる。同口腔外科では、採取した組織を液体窒素で凍結させるため、すぐに切片が作られ、迅速に病理診断できる。診断結果は生検の翌日に患者に伝えられる。

 一般的には舌がんなど口腔がんの結果を受けると、画像診断を行って治療計画をたてる。手術室の空き状況、入院ベッドの確保などもあり、治療開始までに早くとも2週間はかかってしまう。

 そのような時間をも同口腔外科は無駄にしない。生検時にがんが強く疑われる場合には、採血も同時に行っておき、その血液で抗がん剤「TS-1」の適応を調べておく。抗がん剤の感受性があれば、診断がついた時点から抗がん剤治療をスタートする。

 抗がん剤「TS-1」は2週間経口投与し、1週間休む。画像診断も抗がん剤を服用しながら進めていく。

 このシステムであれば、迅速病理診断と同時に治療がスタートできるので無治療期間がない。そして、抗がん剤服用3週間後に患者の状態に最も適した治療、「手術」「放射線療法」「化学療法」などが選択されて行われる。
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腰部脊柱管狭窄症

“1週間で最も多く生番組に出演する司会者”としてギネスに認定された、みのもんたさんが手術を受けたことで一躍有名になったのが「腰部脊柱管狭窄症」。腰痛や坐骨神経痛の原因のひとつである。

腰部脊柱管狭窄症は、背骨にある神経の通り道である「脊柱管」が、腰椎の加齢変性、周囲の靱帯の変性、腰椎分離・すべり症などが原因で圧迫され、脊柱管が狭くなって神経に影響を及ぼす疾患である。

症状には「馬尾型」「神経根型」「混合型」の3つのタイプがある。

馬尾型は、腰部脊柱管の中央を通る神経の馬尾神経を圧迫し、坐骨神経痛ほどの強い痛みはないものの、症状は広範囲にでる。両脚全体がしびれ、脱力感のため脚に力が入りにくい。さらに、頻尿や残尿感、便秘も起こることがある。

脊柱管の左右を走る神経根が圧迫されると強い坐骨神経痛のような痛みが生じる。これが神経根型。神経根は左右に通っているので、圧迫された側の脚に痛みが起こる。

そして、混合型は馬尾型と神経根型が同時に起きているタイプ。

この3つのタイプに共通している症状が「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。しばらく歩くと脚が痛くなって歩けなくなる。が、少し休むとまた歩けるようになる。歩ける距離は重症になるに従って短くなる。

治療は症状、QOL(生活の質)を考えながら行う。保存的治療と手術的治療があり、保存的治療としては理学療法、装具療法、薬物療法、神経ブロックなど。

理学療法には、腰をホットパックや極超短波、レーザーなどで温めて血行を改善する温熱療法をはじめとして、けん引療法やマッサージ療法などがある。

コルセットを使うのが装具療法。コルセットの左右に金属の支柱があり、体がそるのを防ぐので脊柱管が狭くならない。

薬物療法は神経が酸欠状態になるのを防ぐために行うもので、「末梢循環改善薬」などを使うと約30%の患者に、何らかの効果がでる。このほか骨粗鬆症の治療薬も使われる。

神経ブロックには神経根ブロックと硬膜外ブロックがある。ただ、神経ブロックは馬尾神経が圧迫されている馬尾型にはあまり効果がない。

そして、保存的治療に限界を感じたり、QOLが極めて悪いとなると、手術的治療を選択することになる。

手術では「開窓術」「椎弓(ついきゅう)切除術」「脊椎固定術」が行われている。

開窓術は、背中側からアタックする手術。神経を圧迫している骨を部分的に削り取る術式である。

圧迫部分が広い馬尾型の場合は、椎弓を広く切除する椎弓切除術。脊椎固定術では、チタンのネジやロッドを使って体を支えるインスツルメンテーションを用いての固定手術が中核となっている。いずれの手術も、基本は減圧術である。
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非アルコール性脂肪肝炎 NASH

 今、NASH(ナッシュ)を発症する人が増えている。その数、1000万人と推測されている。NASHとは、「非アルコール性脂肪肝炎」。

 「なんだ、脂肪肝か」と思う人が多い。が、よく病名をチェックしてほしい。アルコールの前に「非」がついている。

 脂肪肝とは肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積され、肝臓が腫れている状態。“酒のみの脂肪肝”といわれるように、お酒を飲む人に多い疾患である。

 ところが、NASHには原因にアルコールが含まれず、女性よりも男性に圧倒的に多いという特徴がある。男性はおへその周囲が大きくなる「内臓脂肪型肥満」が多いからである。つまり、肥満、高血圧、糖尿病のある人、その前段階といえるメタボリックシンドロームの人々にも多く合併しているのがわかっている。

 これだけだと、怖いと思わないだろうが、実は10〜20%の人々が脂肪肝から先へ進行してしまう。脂肪肝炎を起こし、さらに肝硬変、肝ガンへ――。

 怖いNASHは1998年から認識されるようになった新しい病気。だから、知らない人も多い病気であるとともに、まだまだわからないところもある。

 非アルコール性肝炎から脂肪肝炎へと炎症を起こす原因は、現時点で4点考えられている。

 ●脂質の燃焼で活性酸素が多く発生する。
 ●炎症を増幅させるサイトカインという物質が内臓脂肪細胞から分泌され、刺激する。
 ●内臓脂肪が膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの効きを悪くする。いわゆる「インスリン抵抗性」で、これも関与していると考えられる。
 ●肝臓に鉄が過剰蓄積しているケースもあり、鉄が炎症に関与している可能性もある。

 このNASHは静かに進行するので、年に一度の定期検診が不可欠である。そこで「脂肪肝が疑われる」と出た場合は、消化器内科を受診し、精密検査を受けるべきである。

 肥満の有無を調べた後、「血液検査」と「超音波検査」が行われる。

 血液検査では「ALT(GPT)」「AST(GOT)」「血小板数」「血清鉄」などを調べ、ALTやASTが基準値より高いと脂肪肝や脂肪肝炎が疑われるが、脂肪肝では基準値内でも疑われることが多い。

 超音波検査では脂肪肝はわかるものの、脂肪肝とNASHの診断がつけられない。

 そのため、確定診断には肝臓の組織を採って調べる「肝生検」が行われるが、その前に、脂肪肝の治療として「生活習慣の改善」や薬を使っての「合併疾患の治療」が行われる。
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多発性硬化症

最近、関心が高まっている病気に「多発性硬化症」がある。世界的に見ると、北欧やイギリス、カナダ、アメリカ北部、オーストラリア南部など、日照の少ない地域に患者が多く、暖かい地域に少ない。日本でも北海道や東北に多く、沖縄に少ない傾向がある。

発病のピークは20〜30代で、患者の大半は若い成人。男女比は1対3で女性に多い病気である。

多発性硬化症は脳、脊髄、視神経からなる中枢神経系のあちこちに病巣ができ、場所によってさまざまな症状を引き起こす病気である。

「大脳に病巣がある」と、体の片側だけの感覚が異常になる片側不全麻痺(へんそくふぜんまひ)、言いたいことが話せない失語症、物が覚えられない、物忘れをするといった記憶・学習障害。そのほか、情動障害、半盲、性機能障害などが起きる。

また、「小脳・脳幹に病巣がある」と、物が二重に見える複視のほか、運動障害、めまい・平衡障害、構音障害、嚥下(えんげ)障害など。「脊髄に病巣がある」と、運動障害、感覚異常、排尿障害など。「視神経に病巣がある」と、視野欠損などが起きてくる。

体のさまざまなところにさまざまな障害が起き、症状が安定している「寛解(かんかい)」と「再発」を繰り返し、進行していく。寝たきりとなり、合併症の肺炎などから呼吸停止で亡くなることも、まだある。

このような症状を起こす多発性硬化症のメカニズムは、次のようなものだ。

神経細胞と神経細胞は軸索で結ばれており、軸索を覆っているのがミエリン(髄鞘(ずいしよう))という膜。ミエリンは神経同士を絶縁し、情報混乱を起こさないようにしている。ところが、自分の体を守るはずの免疫系がミエリンを攻撃し、壊してしまうのがこの病気である。

攻撃が強いとミエリンに覆われていた軸索も壊れ、修復できなくなる。つまり、多発性硬化症とはミエリンのタンパク質に対して起こる自己免疫疾患である。

難病ではあるものの、今日では治療は大分進歩した。2000年、多発性硬化症の再発を長期に抑える薬のインターフェロン・ベータ1b「ベタフェロン」(自己注射薬)が認可されたのである。

この治療薬によって、早期に発見して早期にベタフェロンを使うことで付き合っていける病気になってきた。

今日、再発し、症状が急速に悪くなる「急性増悪期」には「ステロイド・パルス療法」を行う。点滴用のステロイド薬を3〜5日間、大量投与。これを一クールとして、通常は1〜2クール行う。

ステロイド・パルス療法で効果が見られないときには「血漿(けっしょう)交換療法」が行われる。

また、再発予防と障害進行の抑制に対しては、今日の標準治療はベタフェロン。ベタフェロンが使えない患者には、「免疫抑制剤」が使われることがある。
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posted by Dr.クマ at 14:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 多発性硬化症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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